私が20代後半の頃、一つ上の先輩になぜか目をつけられたことが、今でも忘れられません。
私はただ普通に業務に勤しんでいただけだったので、なぜ嫌われたのか、本当に謎でした。
確か最初は、朝、自分のデスクでパソコンの調子を確認していたときのことです。先輩がトコトコと私のデスクまでやってきて、面と向かっていきなり言いました。
「お前、なんかムカつくな」
突然因縁をつけられ、私の頭の中はパニックでした。
その先輩とは、入社してから一緒に何か大きな仕事をしたわけでもなく、ほとんど関わりがありませんでした。私は会社では大人しくしていた方だったこともあり、それまで何とも思っていなかった先輩が、一瞬で憎たらしく、怖い存在に変わりました。
避けるほど、関係はこじれていった
私のデスクと先輩のデスクは、微妙な距離で離れていました。私が先輩側の通路を通らなければ、一日中顔を合わせずに過ごすことも可能です。
ただ、露骨に避ければ、「あいつは俺を避けている」と思われるかもしれません。どう行動すればよいのか、内心かなり悩みました。
私は後輩の立場でもあったので、「先輩に嫌われている以上、なるべく視界に入らない方がいい」と考えてしまいました。他部署に書類を渡しに行くときも、先輩のデスクの近くを通らないように、わざわざ遠回りしていました。
しかし、そうした態度はオフィスの空気を通して伝わってしまうようです。
ある日の退社時間、先輩からガンを飛ばされながら言われました。
「お前、舐めてんの?」
その言動も本当に憎たらしく、内心ではとても腹が立ちました。ただ、先輩と後輩という関係があるため、強く反抗できないことがもどかしかったです。
うな重を前に、ようやく聞けた本音
先輩の嫌味な態度は、なかなか変わりませんでした。
そこで私は、自分の方から関係を修復しようと考えました。勇気を出して退社時刻に先輩のデスクへ向かい、声をかけました。
「今日、このあとお時間ありますか?よければ、食事でもどうですか?」
私の大胆な行動に、先輩は少し驚いた様子で聞き返しました。
「ああ、いいけど。二人だけか?」
さすがに気まずいと思いましたが、これで先輩との関係が収まるならと、勇気を出しました。「二人で……」小さな声で答えると、先輩は「そうか……じゃあ行くか」と言いました。
会社を出て一緒に歩いていると、それまでかなり不機嫌だった先輩の雰囲気が、少し丸くなったように感じました。
しばらく歩くと、鰻屋さんがありました。「ここ、入りませんか?」私がそう言うと、先輩は「うなぎ、いいな」と少し上機嫌になりました。
店内は落ち着いた雰囲気で、私たちは奥の座席に通されました。先輩がうな重を頼んだので、私も同じものを注文しました。
しばらくしてうな重が運ばれてきました。おいしそうに食べる先輩を見て、「聞くなら今だ」と思った私は、思い切って尋ねました。
「私、何かしてしまったでしょうか?」
できるだけ下手に出て聞くと、先輩は答えました。
「お前、この前の会議のとき、俺のこと無視しただろ。あれはありえない行為だぞ」
そして、私が何をしたのか、そのとき先輩がどう感じたのかを事細かに話してくれました。
それを聞いて、私は自分が先輩を無視したと思われていたことに初めて気づきました。まったく悪気はなかったのですが、先輩にはそう見えていたようです。
私はその場で誠心誠意謝罪しました。
原因が分かったことで、先輩とも無事に和解できました。その日は、長く抱えていたものがようやく解消され、いい気分で帰ることができました。
相談者へのメッセージ
やはり、自分から行動しないと何も変わらないということはあるように思います。意を決して自分から行動することで相手の方も多少心を開いてくれる可能性は少なからずあるはずです。しかし、気をつけて欲しいのはタイミングです。
これがずれてしまうと関係が更に悪化してしまうことがあります。なのでその見極めも肝心です。