55歳で長年の夢だった古着屋をオープンしました。アパレル業界に長く携わっており、仕入れに関しては自信がありましたが、経営するとなると話は別でした。
裏通りに面した店舗では商品はなかなか売れず、客足が伸びないのを景気のせいばかりにしていました。手元にあった500万円はあっという間に消え、公庫からの借入で店を維持する毎日でした。
Wataseさんと同じく、コロナ禍の追加融資で借入は1,000万円を超え、毎月20万円の返済が重くのしかかりました。
末期には、仕入れ代金を支払うために生活費を削り、電気代の督促状が届く店内で、売れ残ったヴィンテージジーンズを眺めながら「これが自分の人生の成れの果てか」と涙が止まりませんでした。
50代にもなって家族に心配をかけ、自己嫌悪で心が粉々になりました。店を閉めることは、自分の人生そのものを否定するように感じて、どうしても決断できなかったのです。
妻の言葉が、見栄を捨てて新たな一歩を踏み出せた時
転機となったのは、資金が底を尽き、ついに家賃が払えなくなった時でした。
妻から「もう、あなたは十分に戦ったよ」と言われたことでした。
その一言で、自分が守ろうとしていたのは店ではなく、ただの「見栄」だったと気づきました。
私はすぐに店舗の解約を決め、在庫をすべて自宅へ引き上げました。
そして「プライドを捨てて、もう一度頭を下げて働こう」と決意し、以前から懇意にしていたアパレル会社の営業職として働くことになりました。
私の「店舗経営の失敗経験」を「現場の痛みが分かる強み」として評価してくれて、採用が決まったのです。
その際、「副業での在庫処分」の許可を得ました。
これが、「会社員」と「ECサイト運営」という二足のわらじで再出発する第一歩となりました。
店舗という「箱」を手放したことで、ようやく冷静に自分の商売を客観視できるようになったのです。
「明日への恐怖」が消え、安定収入が心を救い、仕事に手応えを感じる日々へ
会社員に戻ってからは、精神状態が劇的に安定しました。毎月、決まった日に給与が振り込まれる。この当たり前のことが、どれほど私の心を救ってくれたか分かりません。
日中は営業として必死に働き、夜と週末は自宅でECサイトを運営する。そんな多忙な日々ですが、以前のような「明日への恐怖」はもうなくなっていました。
ECサイトでは、店舗家賃という固定費がない分、利益を返済に回す余裕が生まれました。
また、会社員として最新の市場トレンドやITツールに触れることで、かつての自分の経営がいかに独りよがりだったかを痛感し、それをサイト運営に活かしています。
現在の売上は月15万円程度ですが、給与と合わせることで、借金返済を続けながらも人間らしい生活を取り戻しつつあります。
一度は「もう終わり」だと思った人生でしたが、形を変えて商売を続けられている今、私は以前よりもずっと、仕事に対する手応えと幸福を感じています。
相談者へのメッセージ
Wataseさん、会社を畳むことは「失敗」ではなく、今の自分に合った「新しい戦い方」へのシフトに過ぎません。40代の再就職は不安でしょうが、経営者として地獄を見た経験は、組織の中でも必ず武器になります。
まずは固定費という鎖を切り離し、心に「安定」という栄養を与えてあげてください。一度リセットすれば、また違う形での挑戦が見えてきます。あなたはまだ、何度でもやり直せます。